刺繍が「先に」いた。
私にとって刺繍は、物心ついた時からすぐ側にある「当たり前」の風景でした。祖母の工房で、数百着のユニフォームに寸分違わずロゴを刻み続ける職人技。小学生の頃、その手伝いをしながら見ていたのは、効率と正確さがすべてを優先する「工業的」な世界でした。
大学を卒業し、会社員として歩み始めてからしばらくは、ミシンに触れる機会も少なくなっていました。しかしある時、自分のデザインを服に落とし込む手段として、改めて祖母のミシンの前に座ってみたのです。
誰かのための「作業」としてではなく、自分の表現のために針を動かしたとき、刺繍が持つ自由な面白さに初めて気づきました。ただの加工手段ではなく、もっと個人の感情に寄り添う、面白いものにできないか。その答えが、目に見えない「音」を触れられる「質感」へと変える『SEW THE SOUND』でした。

