「音」を纏い、刺繍をアップデートする。
1997年生まれ。幼少期より、60年以上続く祖母の刺繍工房で糸と針に囲まれて育つ。大学でデザインを学び、現在は会社員として活動する傍ら、自身のルーツである「刺繍」の新しい可能性を追求している。
刺繍が「先に」いた。
私にとって刺繍は、物心ついた時からすぐ側にある「当たり前」の風景でした。60年以上続く祖母の工房で、数百着のユニフォームに寸分違わずロゴを刻み続ける職人技。小学生の頃、その手伝いをしながら見ていたのは、効率と正確さがすべてを優先する「工業的」な世界でした。
大学を卒業し、会社員として歩み始めてからしばらくは、ミシンに触れる機会も少なくなっていました。しかしある時、自分の描いたデザインを形にする手段として、改めて祖母のミシンの前に座ってみたのです。
誰かのための「作業」としてではなく、自分の表現のために針を動かしたとき、刺繍が持つ自由な面白さに初めて気づきました。ただの加工手段ではなく、もっと個人の感情に寄り添う、面白いものにできないか。その答えが、目に見えない「音」を触れられる「質感」へと変える『SEW THE SOUND』でした。
体験をデザインするための独自システム
単に音を形にするだけでなく、録音から刺繍が完成するまでの「一連のライブ体験」そのものに価値を置きたい。そのこだわりを形にするため、既存のソフトに頼らず、0から専用のシステムを構築しました。
「自分の声が、今、目の前で糸に変わっていく。」
その驚きと感動を、一切の妥協なく届けるための挑戦でした。
服を「記憶の相棒」に、刺繍を未来に。
今、日本の刺繍業は安価な海外製品や効率化の波に押されています。しかし、この素晴らしい技術はもっと面白く、もっと温かいはずです。
クローゼットで眠っていた服に、大切な人の声や、その時の決意を刻む。するとその一着は、再び手放せない「お気に入り」へと生まれ変化わります。音の記憶を纏うことで、会話が生まれ、思い出がより濃く残っていく。
私はこの活動を通じて、刺繍という伝統をアップデートし、服と人の新しい関係性を築いていきたいと考えています。
"Translating the invisible into the tactile."
